謹んで新年のお慶びを申し上げます。
本年の「ひとうたの茶席」では、平安の和歌を取り上げます。
平安の貴族は、感情をそのまま吐露せずに、「もの」につけたり、「こと」になぞらえて、「うた」を詠み、想い人へと届けていました。
直接的ではない「うた」だからこそ、それを書くときにも決まった文字では満足しませんでした。当時使われた仮名文字は、現在使われる平仮名だけでなく、変体仮名といわれるものもありました。
たとえば平仮名の「あ」は、もともと「安」から出来ていますが、変体仮名では同じ音の「阿」や、はじめの音が「ア」である「愛」や「悪」なども用いて書き表します。五十音といわれる現在の平仮名に比べて、平安時代にはその三倍から五倍もの変体仮名が日常的に使われていたのです。
選んだ仮名によって、うたに載せた心をさりげなく表現し、より一層心を通じ合わせることにもつながっていったのでしょう。
「ひとうたの茶席」では、「うた」に対する書の表現も合わせて楽しんでいただけることを想定しています。書家である私が、和歌を自らのなかに落とし込み、さまざまな仮名文字をつかって書き表すことで、その魅力をお伝えしていきたいと思います。
一年間、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
根本知
※第一回の公開は2024年1月7日(日)です。
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